施設職員さんがやってしまいがちなこと

ケアマネの知恵袋

ケアマネジャーをしていてよくあるケースが、利用者さんの家族からの「ここだけの話」です。

ある日、利用者さんの娘さんがやけに元気がありません。どうしたのかとたずねたところ、デイからいつも通り母親を送ってきてくれた際のこと「職員さんから、母がとても迷惑をかけていると聞きました。このまま続けて行かせてもらっても良いのでしょうか?」というもの。

デイサービスの事例

軽度の認知症があるが、デイを楽しみにしている元気いっぱいの対象者。

おやまあ、何があったのかとおもったら、送迎車に乗り込むなりいつの間にか忍ばせていた飴玉を他利用者に配りだし、到着すれば真っ先に降車して駆け出すため職員が転倒防止に大わらわ。

一日中活動的で片時も職員の目が離せないという、またおしゃべりに夢中でトイレ誘導を聞かず失禁してしまう、などなど。

介護あるあるの内容ばかりなのですが、これまた元気でしっかり者の女子職員がとくとくと娘さんに訴えてしまったのでした。

娘さんとしては自分が責められているような気持でいたたまれなくなり、すっかり元気を失くしたというわけです。

職員さんはさらに「失禁で汚れたため入浴の日ではなかったが、お風呂に入ってもらった。その際も嫌がられたのを誘導してきれいにすることが出来たのだ」と得意気に報告したのだそう。

はい!職員さんからしたら正確な報告にすぎないのです。

正確な物言いは人を傷つける場合がある

自分の言動が、相手にどう映るのか、相手を傷つける言葉を使っていないか?自分が伝えたい思いだけで内部の吐露になってはいないか?相手の微妙な表情の変化を見逃さず、伝えられているか?

あくまで相手を主体に判断してもらいたかった。
利用者さんが不利益になることは伝える必要がありますが、その場合にも慎重に言葉を選ぶことが大切です。

どんなに親しくなっても家族に甘えてはいけない

もしかして職員の気持ちの中に、わずかでも甘えがなかったでしょうか。

もっと言うなら「きっとこの的確な介護は、私にしかできなかったですよ」という意思表示(または自慢)がにじみ出てはいなかったでしょうか?

「それは大変でしたね。あなたに対応してもらえて助かりましたよ。さすが〇〇さんですねえ」などという誉め言葉を無意識にご家族に求めてはいなかったでしょうか。

介護保険サービスを受けている方のご家族の多くは、常時「お世話になっている」気持ちがあり「迷惑をかけているのでは」という意識を強く持っているものです。
そこに、あまりにありのままの報告をこまごまとしたなら、その後家族はどういう心境に陥るかは想像に難くありません。

理解ある家族のなかには、「みなさん大変ですね」「疲れているのよね」など表現される方もおられますが決して良い気持ちではないものです。

家族だけでは大変だから介護保険サービスを利用しているのです。利用者さん家族は、なにひとつ遠慮することはありません。

スタッフさんたちが日々終わりのない介護に忙殺され、ちゃんとやってあたりまえの世界の中で、なかなか自己肯定につながりにくいのはとても理解できます。

営業時間は座る間もなくゆっくり食事を摂る時間も取れず、送迎が終わると終礼や申し送りや記録に追われ、休む間もなく一日が終わるのです。
いくらプロでも不満が溜まり、時々は褒めてもらいたいと思うのも無理はありません。

プロ意識を正しくもとう

しかし、同情するわけにはいかないのです。
プロ足るもの、いかなる時も甘えは許されません。いわんや利用者さんもしくはその家族においてをやなのです。

常に利用者さんへの節度と尊厳をもっていれば、相手には愛情のある助言となりますが、少しでも自分のはけ口になってしまったら、それはもう非難と虐待にしかならないことを、肝に銘じておく必要があります。

自分の役割に誇りを持つプロフェッショナルは、いかなる時も自分を律することが出来なくてはなりません。何より在宅で大変だからこそ介護保険サービスを利用するのだということを忘れてはならないでしょう。